法律相談Q&A(11) 解雇④―業務上負傷した従業員の解雇(人事・労務)
【Q】
弊社の従業員が、業務中に負傷しました。療養開始から2年経って症状が固定したとの連絡を受けましたが、後遺障害が残ったため、現在も職場に復帰できておりません。弊社としては、医師の診断書を見る限り、同人の職場復帰の可能性は低いと考えており、解雇を検討しておりますが、同人を解雇するにあたって検討すべきことを教えてください。
【A】
業務上負傷し、既に症状が固定したものの、後遺障害のために職場復帰ができていない労働者の解雇については、①後遺障害の程度に照らした職場復帰の可能性、②代替職場の提供の可能性、③労働者の職場変更の希望等を総合的に考慮し、解雇の合理性、社会的相当性が判断されることとなります。
本件のような場合、会社としては、医師による診断内容、診断の記録、従業員からの聴き取り等によって労働者の復職可能性の程度について分析するとともに、復職させる場合に、本人の希望や健康状態等に配慮して業務内容、就業時間等を調整したとしてもなお復帰が困難と認められる合理的な根拠があるかといった観点から、解雇について判断する必要があると思われます。
(理由)
1 法律上、使用者が、業務上負傷し又は疾病にかかった従業員を解雇することは制限されており、具体的には、労働基準法第19条において、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間」は、使用者はその労働者を解雇することができないと定められています。
しかし、本件のように、既に症状が固定(治療を続けても、これ以上症状が良くならない状態のことをいいます)したものの、後遺障害が残ったために職場復帰ができない労働者を解雇する場合は、「療養のため」の休業とはいえませんので、原則として、本条によって解雇が制限されることはありません。
2 しかし、このような場合であっても、使用者は無制約に労働者を解雇することはできず、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)という解雇権濫用法理に服することとなります。
そして、本件のような、業務上負傷し、既に症状が固定したものの、後遺障害のために職場復帰ができない労働者の解雇の効力が問題となる事案においては、①後遺障害の程度に照らした職場復帰の可能性、②代替職場の提供の可能性、③労働者の職場変更の希望等を総合的に考慮し、解雇することについて「客観的に合理的な理由」があるかどうか(解雇の合理性)、「社会通念上相当」といえるかどうか(社会的相当性)が判断されることとなります。
以 上