法律相談Q&A(7) 解雇② 解雇理由証明書(人事・労務)
【Q】
素行に問題のある従業員を解雇したところ、後日、当該従業員から、解雇理由を記載した証明書を交付するよう求められました。そのような要求に応じる必要があるのでしょうか。仮に応じるとした場合、作成上のポイントを教えてください。
【A】
解雇理由を記載した証明書(解雇理由証明書)を交付する必要があります。
作成のポイントは、解雇の理由を具体的に示すこと(就業規則の条項に該当することを理由とする解雇の場合、就業規則の当該条項の内容や、内容に該当するに至った事実関係を記入する必要があります)、複数の解雇理由を網羅的に記載すること等です。
(理由)
1 労働基準法22条2項は、労働者が、解雇を予告された日から退職日までの間に解雇理由の証明書を請求した場合、使用者は、その証明書を交付しなければならないと定めています。また、同条1項は、労働者が、退職の場合において退職の事由(解雇の場合には、その理由を含む)について証明書を請求した場合、使用者は、これを交付しなければならないと定めています。したがって、使用者は、解雇された労働者から、解雇理由を記載した証明書(解雇理由証明書)の交付を求められた場合には、その求めに応じる必要があります。
2 解雇理由証明書の交付が必要とされる趣旨は、(ⅰ)使用者が恣意的に解雇するのを防止すること、(ⅱ)労働者が解雇を受け入れるか、争うか迅速に判断できるようにすること、(ⅲ)争う場合にも、第三者機関が解雇の有効性を迅速的確に判断できるようにすることとされています。
したがって、解雇理由証明書の解雇理由については、できる限り具体的な内容を記載する必要があり、労働基準局の通達でも、「解雇の理由については具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならない」(平成11・1・29労働基準局長名通達)とされています。
3 前述のとおり、解雇理由証明書は、第三者機関が解雇の有効性を判断する際の材料ともなるものです。そのため、民事訴訟等で争う場合には、当該証明書に記載しているもののみが解雇理由として扱われ、後日、解雇理由を追加することが難しくなります。したがって、解雇理由が複数存在するのであれば、全てを明記したうえで、交付することが望ましいと言えます。
4 労働者との間で、解雇の有効性が問題となる場合には、解雇理由証明書の記載内容が重要な意味を持つ場合がありますので、元従業員からの求めがあった場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。
以 上