法律相談Q&A(2) 試用期間の法的性質―試用期間満了後の本採用の拒否(人事・労務)
【Q】
当社は、正規従業員を採用する際、3か月間の試用期間を設けています。この度、新規で採用した社員について、2か月の試用期間が経過しましたが、勤務成績が悪く、試用期間が満了した時に解雇(本採用の拒否)をせざるを得ないと考えています。どのような点に注意すべきでしょうか。
【A】
本採用が困難である客観的合理的な事情を、具体的に主張立証できるよう注意すべきです。
(理由)
1 企業が試用期間を設ける目的は、新規採用者を実際に就労させ、採用試験では知りえなかった業務適格性などをより性格に判断して、不適格者を排除することにあります。
2 試用期間の法的性質は、個々の契約内容や就業規則等の定めにより決定されます。もっとも、一般的には、試用期間中の労働は、「試用」というより、むしろ「見習い」という実態にあり、ほとんどすべての者が本採用され、採用拒否は例外であることから、試用契約は、解約権が留保された期限の定めのない労働契約と考えられています。
したがって、試用期間経過後の本採用拒否も、解雇権濫用法理(労働契約第16条)が適用され、試用期間の趣旨、目的に照らして、本採用拒否が客観的に合理的と認められ社会通念上相当であると認められる場合に許されると考えられています(最高裁平成2年6月5日判決・神戸弘陵学園事件)。
3 そして、多くの裁判例によれば、本採用拒否の合理性を判断するにあたっては、従業員の提供すべき労務の内容、労働の状況、企業の適格性判断の具体的方法等が考慮されています。
4 本件では、対象者の勤務成績が悪いことを理由として解雇(本採用の拒否)を検討されています。これが有効とされるためには、本採用をすることが困難であるという事情を、企業の側が立証できるようにする必要があり、以下の方法をとることが考えられます。
① 対象者にどのような問題点があり、それに対して、上司がどのような注意指導を行ったかについて、具体的に明らかにしたうえで記録に残すこと。
② 就業規則に試用期間の延長に関する規定がある場合は、試用期間の延長を行わずに改善不可能との判断を下して良いかを慎重に検討し、その経過を記録に残すこと。
③ 別の職務を担当させてみたり、解雇の前に退職勧奨を試みたりするなどして、できるだけ解雇を回避しようと努力したことの記録を残すこと。
もっとも、解雇(本採用の拒否)は、その有効性を巡って深刻な紛争となる可能性があり、その有効性は、個別具体的な事情によって異なりうる微妙な判断になりますので、事前に弁護士に相談することをお勧めします。
以 上